不動産営業を辞めてスタバでバイト

脱サラ(元住宅営業マン)してスタバでアルバイトした体験を綴ります。

いい店づくりはマネジメントが9割

今日は「〜が9割」という書籍のタイトルブームに少し乗っかってみよう。
 
スターバックスは人々がピットインする場所でなければならない」
前回の記事では、そのように締めくくった。
 
じゃあ数ある飲食店のなかから、お客様に選んで貰えるお店になるにはどうすれば良いだろう?
いや…「人に活力を与える」という意味では、決して飲食店だけじゃないような気もする。
そういう意味では、ディズニーランドやリッツカールトンだってライバルになるのか。
 
しかし単価や頻度で考えると、やっぱり飲食店で比較するのが分かりやすくていい。
 
と言うわけで、数多くある飲食店のなかで、僕らのお店を選んでもらう為にどうするか。
〝顧客のファン化″ のために必要な具体的な振る舞いについては、これまで何度か持論を述べてきたつもりだ。
 
しかし最も重要なのは、それをどれだけ多くの従業員が実践できるかどうかであり、それはつまりマネジメントの手法を問うものである。
 
ファンを獲得する店づくりに欠かせないマネジメントとは何だろう?
 
組織マネジメントに失敗する多くのマネージャーは、部下を「自分の言うことをよく聞く部下」と「そうでない部下」に区別しているように見える。そうしたマネージャーの多くは、言うことをよく聞く部下を可愛がり評価し、そうではない部下を煙たがり批判の対象とする。
 
しかし一方で、部下たちは「教えを請いたいマネージャー」と「そう思えないマネージャー」を(無意識に)区別している。
 
つまり、あなたがマネジメントに悩みを抱えるマネージャーだとして、もし「言ったことが全然できない部下」がいるなら、すごく簡単な話、その部下にとってあなたが「教えてもらいたい存在じゃない」ってことかもしれない。
 
そう考えるのが、上司として建設的に考えられないだろうか?
上司は部下に〝憧れ″られてなんぼ。…と思うことができれば、部下の不出来は自分の魅力不足と思える。自分の魅力が足りないのだから、努力が足りないのは部下ではなく、自分の方だろう。
 
しかし、あなたがもし自分のことを慕わせようと考えているなら、それは全くの逆効果だ。
 
部下の誤りを見つけては、正す。それがこれまで正しい上司像とされてきた。
正論を武器にいい気になり、細かなミスを見つけては注意を繰り返し、長々と説教を垂れる。
部下の言い分も聞かず自分の意見を強要する。もしくは聞いてるフリをしているだけ。
「聞く力」というのは巷で流行済みだから。〝聞くフリ″という厄介な技術が、マネジメントの現場には広く浸透してしまった。
 
しかしその浅はかなノウハウは、思った以上に簡単に見抜かれている。ことに気づいていない。
部下をコントロールしようとするほど、憧れとは程遠い存在になっていく。
 
その結果、部下はあなたを尊敬の対象からは外し言うことを一切聞かなくなる。
あなたがどんなに正しいことを言ったとしても、正論だけでは部下は動かない。
いや、動くかもしれない。これ以上うるさく言われないために。
 
だから、マネジメントを成功させるために最も重要なことは、部下にとって「あの人のようになりたい」存在になること。
 
「あの人の言うことなら、ちょっとやってみよう。」と思われる存在。
 
そうした関係性って、一朝一夕で築くことのできない立場だ。
しかし、ほとんどの上司は部下に〝自分に対する敬意″を急いで埋め込もうとする。
そうした上司は、自分が如何に正しいかを証明する能力に非常に長けている。
 
その結果、知識や経験の足りない部下は行動や意見を封じ込められ、上司の言う通りに動かざるを得ない。
 
なぜ、上司はそこまでして部下をコントロール(支配)したがるのか。
その根本にある一つは『地位の維持』だろう。
 
そういう上司はきっと、部下に〝自分を超える存在″になって欲しくないのだ。
出る杭を打つようなマネジメントで、組織が伸びるはずもない。
 
更にわがままなことに、自分の〝地位を下げる存在″にもなって欲しくないのだ。
部下の失敗を自分の失敗とみなされ、周りに責任を負わされるのではないか恐怖を抱いている。
 
もう少し視野を広げて考えてみよう。
 
そもそもビジネスとはなんだろう。僕らは何のために働くのか。
社内で出世して、多くの従業員の上に立ち、今より多くの給料をもらうために働くのか。
 
それはきっとビジネスの本質を大きく外している。そして本質を外した行動はいずれ破綻を招くだろう。
 
例えば空前の携帯ゲームブームによって一時代を築いた企業も、行き過ぎの課金システムによって、その輝きと消費者の信頼を失い、その経営状態は窮地に陥っている。それも、たった数年で。
 
ビジネスの本質は、誰かが必要とするモノやサービスを生み出すことでしかない。
だからお金や地位、名誉のために働くのは只の自己満足であり、それを仕事の理由にしてしまうのは間違いじゃないかと思う。
 
そして自分たちのためだけに働く会社や、自分の立場のために働く上司というのは一目で分かる。
お客様、部下からみて一目瞭然だ。
 
だから働く本質を理解する上司だけが部下に憧れを抱かせ、結果的に良いチームをつくってしまうだろう。そして、その教えを受けて育った従業員たちがファンを獲得するお店や会社をつくるんだと思う。
 

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ここまでお読み頂きありがとうございます。3年前の更新を最後にスターバックスのセキュリティ強化のため社内情報を含む記事の投稿が禁止されました。その後、特にどこに何を投稿することもなく、今も同じ価値観を持ち、そのノウハウを別業界に伝えようと新たな活動を始めています。

スターバックス店員もSNSで評価される。そんな時代。

ぼくらが学生の頃は、Facebookツイッターなんてものはなかった。mixiがあったかなかったか位なもんです。
 
しかし近年SNS勢力の拡大により、多くの人が、それほど近い存在でもない知人の日常までもNEWSとして目を通す世の中になった。
 
それに対し気軽に押した「いいね」が、ニッチな情報を瞬く間に拡散させる。そんな時代になった。
 
特に〝今どき女子″のあいだでは、何やら『インスタグム』というものが流行しているそうな。
 
やはり同じ店に勤める大学生や、女性パートナーを中心にみんな頻繁に利用しているという。
 
そして昨日、一人の大学生パートナーがある投稿について教えてくれた。
 
「昨日ね。友達とインスタでうちの店の検索してたら偶然見つけたんだけど、これ〝元サラリーマン″のことだよ!」
 
そう言って、見せてくれたのが
 
f:id:sarary-man1005:20150818140440j:image
 
f:id:sarary-man1005:20150818140442j:image
 
これを教えてくれたパートナーは、丁度僕がこのお客様へのサービスをした先週の日曜日、同じシフトで働いていた。
だからこの投稿に気付いたとき、すぐに教えてあげたいと思ってくれたらしい。なんと嬉しい…。
 
これを見せてもらい読んだとき、なんだか僕は胸を締め付けられるような喜びを覚えた。
 
やっぱりどんなサービスを心掛けようたって、具体的な評価を一人一人のお客様から頂けるわけじゃない。だから、常に不安は付きまとう。
 
「もっと相手の立場で提案できたんじゃないか…。」
「今の対応で、また来たいと思ってくれるのかな?」
「余計なことではなかっただろうか?」
「なぜ、最後にひとこと添えられなかったのか…」
 
という、自分の振る舞いへの後悔や、相手の気持ちへの不安は残ってしまう。
 
それに、全てのお客様がお店に対して感じた印象をハッキリと返してはくれない。
せめて400〜1000人に1人のお客様が、カスタマーアンケートの当たりレシートによって、任意でコメントしてくれるくらいだ。
 
だから、たった一人でもこんな風に感じ取ってくれた人が実在するなんて、本当に心の支えになる。
 
このお客様もサービス業に就かれているようで、銀座を通勤路にする航空関係者の多くが利用する飛行機会社限定のスタバカードをお持ちだった。おそらくそういうことだろう。
 
この投稿のおかげで、また明日からエネルギー満タンでやっていけそうだ。
僕らの店はこの方のように「また次も来たい」と、しかもそれを〝毎回″ 感じて頂けて、通い続けてもらえるお客様を、1日に一人でも二人でも地道に増やしたい。そうすることが、結果的に自分の活力に繋がる。
 
そしていつか、そうした人々ですべての席を埋め尽くしたい。
活力を与え、与えられる関係性を多くの人々と築くのだ。
 
目標は、1日200人「いつものお願い!」が通じる店づくり。(今のところ70〜80人くらい)
 
そんな店づくりの報告を、引き続き書いていこうと思います。

常連(ファン)を生み出し続けるスターバックスは何をしているか。

「いつものください。」

 
 
そう注文する男性客の〝いつもの″は『ダブルトール エキストラホット ラテ』だ。

と言っても、何のこっちゃ分からない人も多いと思う。
これはスターバックスの店員がレジで受けた注文をBARに短縮して伝えるときに使用するコーリング(合言葉)だ。
ネット上では「スターバックスコーリングは、まるで呪文のようだ」と密かに騒がれている。
 
ちなみにこの注文は、通常1ショットしか入らないエスプレッソを2ショットに変更し、通常より10℃熱めにスチームしたミルクを注いで作るメニューにないカフェラテのこと。
 
まあ簡単に言えば、熱くて濃いカフェラテだ。
この方は、その味を好んで毎日買いに来てくれる。
 
 
他にも、窓際席で新聞を読む中年男性は、いつもマグカップを指定してコーヒーを飲む。
 
「カフェインレスで抽出して欲しい」と、たった1杯のコーヒーにいつも10分も待ってくれる外国人。
 
 
 
更に自前のタンブラーを持参し、淹れたての熱々コーヒーにいつも氷3粒の追加が欠かせない猫舌の年配女性。
 
そして僕がおすすめした〝オールミルク″抹茶ラテを気に入り、いつもリピートしてくれる近所のオフィスに勤めるOLさん。
 
 
こうした常連さんたちは、それぞれの「いつもの」を買いに来てくれる。
いや「いつもの」を共有できる特別な空気感を買いに来てくれるんだと思う。
 
 

〝いつも″と違う注文は、お客様をもっと知るチャンス

 
ある常連さんは、レジの前で注文を口にせず黙って立ってこっちを見ている。
この方には僕から「いつものですね。」と簡単に確認を取る。
 
いつもの『フォーヒア クアトロ with 氷水』
 
毎朝一番に来店され、店内(for here)でエスプレッソ4ショット(クアトロ)を一気に飲み干してから出勤していく。
そして彼は必ず氷水を一緒に注文することを僕らは知っている。
 
だからお店の自動ドアが開き、その姿を確認した瞬間に僕はもう注文をレジに打ち始め、ほぼ同時にもう一人のパートナーは既にBARでエスプレッソを落とし始めている。注文から提供に掛かる時間は、おそらくどの店のどの人よりも最短じゃないだろうか。
 
でも、もしその人が別の注文をしたらどうするの?
例えば「オレンジジュース」を頼んだら。
 
それは、もう作り直すしかない。
 
だけど、いつも4ショットのエスプレッソを注文する人がオレンジジュースを注文するなんてどうかしてる。
 
エスプレッソとオレンジジュースなんて、真逆の飲み物と言ってもいいだろう。
レッドブルと味噌汁くらい違う。
 
 

そこには、きっと何か理由がある。

 
こうした〝いつも″との違いは、お客様からのメッセージと受け取った方がいい。
この感覚はお客様との関係性を深めるうえでとても重要で、相手をもっと知るチャンスだ。
お客様はわざと変化球を投げ、もっと自分を知ってほしいと思っている。(と思い込むことが大事さ。)
 
ある朝、お客様に
「あれ?今日はいつもと違うご注文ですね。どうされました?」と聞くと、
 
「実はちょうど今、夜勤を終えたところで疲れてるんだよね。帰ったらすぐに寝たいから今日はコーヒーじゃないんだ。」そう答えてくれた。
 
このとき『いつも出勤前に立ち寄ってくれるお客様』というのがこちらの勝手な思い込みだったことに気付く。
 
注文が、
1.コーヒーのときはこれから出勤。
2.コーヒーじゃないときは、夜勤明けでお疲れ。
 
この2つの情報を知るだけで、他の店の従業員にはできない会話ができるようになる。
この瞬間、お客様にとって更に特別なお店へと変わる。
 
そのためにも「いつもの」を把握し、いつもとの違いにも敏感に反応しなければならない。
 
 

マニュアル化されたサービスの限界

 
「この店にとって自分は特別な存在だ」
そうお客様自身に感じてもらえれば、きっとまた明日も来てくれる。
 
以前の記事にも述べたが、スターバックスの経営には常連客の存在が欠かせない。
社内では常連客を「ロイヤルカスタマー」と称し、会社にとって特別な存在として位置付けている。
 
さて、こうしたロイヤルカスタマーはどのようにして生まれるか。
 
徹底したサービスマニュアルでお客様をおもてなしすれば良い。
厳格な経営者はそう考えるかもしれない。
社長自身が「こういうサービスを受けると満足」というものを従業員にも求めるだろう。
 
ただそれがどんなに良いサービスだとしても、毎回同じではいつ飽きられても不思議じゃない。
 
「あ。この人は、他の人にも同じことを言っているんだな。」と気付かれる瞬間が必ずやってくる。だからきっとそのうち来なくなる。そう考えた方がいい。
 
そこで『マニュアル化されない接客』の存在が、とても大きな役目を持つ。
 
何度も言うように、ロイヤルカスタマーになってもらうには、お客様が「自分は特別だ」と感じられるような接客が必要だ。
 
「自分にとって特別な店」ではなく「店にとって自分は特別」と感じられる。
なんだか分かりにくいかもしれないけれど、この微妙な違いがめちゃくちゃ大切だと思う。うまく説明できない。
 
 

スターバックスのマニュアル

 
もう少し詳しく話そう。
 
まず、スターバックスにもマニュアルは存在する。
最高品質のドリンクを提供するためのレシピや手順、お客様の待ち時間を減らすための連携(フォーメーション)や、効率的な資材の配置場所など。
できる限り最高の状態でお客様をお迎えするために必要な決まり事があり、それはどのお店にも均一化され守られている。
 
また接客についても、よそよそしさを感じる「いらっしゃいませ」や、過去形の「ありがとうございました」は禁止されており、必ず親近感のある「こんにちは」や、再来店を期待する「ありがとうございます」を言う決まりになっている。
 
これがスターバックスで行われている均一化されたサービスだ。
 
しかし、ロイヤルカスタマーになってもらうためのサービスや応対マニュアルなどは無い。そこは各個人の裁量に任されている。
 
もちろん料金を値引きしたり、追加料金なしで無償提供するなどとは全く異なる。
 
 
例えば、ロイヤルカスタマーのなかには実際にこんなお客様がいる。
 
その方は来店当初から「ショートサイズ(一番小さい)のコーヒーにミルクをたっぷり入れて飲みたい」という要望を持っていた。
 
だからコーヒーを受け取ったあと、ブラックのままいくらか飲み(もしくはこっそり捨て)ミルクの入るスペースを作って飲んでいた。
 
 
 
もちろんそうした要望があると始めに言ってくれれば、店側も何かしらの対応ができる。
 
しかし何も言ってくれなければ、レシピ通りカップ一杯までコーヒーを注いで提供する。むしろちょっとでも量が少ないければ、それを不満に感じる方の方が多いと思って行動するだろう。
 
これは初めて(もしくは数回)来店した人との一般的なやりとりだ。
間違ったことは何一つしていない。
 
 
少し話が逸れるが、スターバックスは初来店のお客様にも十分過ぎるサービスを提供してると思う。(今は従業員になったのでただの自画自賛になるかもしれないが、ここで働く前は只の〝いちスタバファン″だった男の意見として聞いてほしい。)
 
知っている人も多いと思うが、スターバックスではミルクをセルフサービスで好きなだけ入れて飲める。つまりミルクは無料。きっと何も注文せず、こっそりミルクだけ飲んで帰っても分かりゃしない。
 
また、普通の砂糖の他にダイエットシュガーや蜂蜜まで用意してある。もし希望があれば甘いドリンクに使用するキャラメルソースやチョコレートソースだって、なんと無料で追加することができる。
 
そして自慢のコーヒーについても全く妥協していない。
豆を挽いてから必ず24時間以内にドリップし、それを必ず60分以内に提供する。
その期限を過ぎた豆・コーヒーは容赦なく処分される。
 
だから、その品質の高さは飲めば誰でも分かる。
 
こうした誰にでも均一なサービスはマニュアル化されているが、ほとんどの人はこれで十分満足するだろう。このサービスを求めて、時々足を運びたいと思ってくれるだろう。
 
しかし、ロイヤルカスタマーとの間には大きな違いがある。
それが「特別感」だ。
 
マニュアル化したこのサービスで、お客様は特別感を得られるだろうか。
周りを見渡せば皆がそのサービスを受けている。そこに特別感はない。
 
 

マニュアル化できないサービスとは

 
ここで「察する力」に触れておきたい。
ロイヤルカスタマーの誕生には、この力が欠かせない。
 
もし相手がその要望を口にしなくても、2度、3度と来店してくれれば、僕らにはそれをキャッチする機会が与えられる。
しかも2度、3度来店してもらえるサービスは、既にマニュアル化されている。
 
あとは、それに飽きられるまでの数少ないチャンスをどう生かすかだ。
 
さっきの『コーヒーにたっぷりミルク入れたいお客様』
 
いつも決まって注文後にミルクを入れる様子がレジから見て取れた。そのために熱々のブラックコーヒーを無理して少し飲んでいる。
 
「あ。ミルクをたくさん入れて飲みたいんだ。」
 
そう相手の抱えるニーズを読み取ることができれば、オリジナルの提案へと繋げられる。これがマニュアル化されない接客だ。
 
「お客様、いつもありがとうございます。もしよろしければ、同じ分量のコーヒーをワンサイズ大きめのカップでご提供しましょうか。」
 
この提案をお客様は喜んでくれた。
 
まず、たった数回立ち寄っただけの自分の存在を認知してくれていることに驚き、更に密かに抱え込んでいたニーズを察知した解決案に2度驚いてくれた。
 
 
それ以来「ショートサイズのコーヒーをトールサイズ(大きい)カップでよろしく。」が、その人のいつもの注文になった。
 
全員に同じことは提案できない。
ドリンクのサイズに応じたカップを使用することは、マニュアルでの決まり事だから。
しかし相手にそうしたニーズがあると察したなら、決まり事は決まり事ではなくなる。
 
そして、察する能力やその観点は従業員それぞれの個性によって異なる。
それがマニュアル化されない…というより、マニュアル化できない接客だ。
 
そしてお客様は自分オリジナルの「いつもの」が通じる感動、満足感を求めて通い続けてくれるようになる。それがロイヤルカスタマーだ。
 
もちろん初対面の相手にだって、質問を巧みに繰り出すことで、相手の口から要望を聞き出すことはできる。
しかし本当にお客様の心を掴むには、その要望を口にさせてしまう前に、先回りして提案することだろう。
そのために行動をよく見て、相手の気持ちを「察する」ことが求められる。
 
「お店にとって自分は特別な存在」
 
お客様には是非、そう思って来て欲しい。
それが多くのスターバックスで働くパートナーの気持ちだろう。
 

顧客満足の低下と向き合ってみる。

顧客満足の指標である〝フレンドリーさ″の低下。
その要因をこの1ヶ月、自分なりに考察をしてみた。
 
 
 
原因は3つ。
 
 

1つ 「単純に忙しくなった」

 
 
 
顧客満足の低下と矛盾するようだが、昨年のオープンから客数と売り上げは日に日に上昇を続けている。これは、これまで築き上げられてきた『スターバックス』の持つブランド力が大きく影響しているだろう。
だから個人でカフェを開業し、あの評価の低いアンケート内容で、同じように繁盛するかは分からない。
 
 
 
なぜ売上は伸びてるのか?
 
認知度が上がったことが理由だろう。
 
僕の働く店は都心ど真ん中、駅前の好立地。
…と言っても、実は結構気付きづらい場所にある。
 
 
 
だから当初はなかなか見つけて貰えず、客足もまばら。
仕事量も、忙しい日の方が少なかった。
 
 
 
しかし、3ヶ月も経てばそれなりに人の目には付くようになるし「あそこにスタバできたよ」といった噂も、わーっと広まる頃合いか。
ただ、今でも「この店舗いつ出来たの?職場すぐそこなのに知らなかったよ」とも言われることもある。まだその程度の認知度だ。
 
 
 
それでも今までよりずっと多くの新規来店があるお陰で繁盛し、店は忙しい。
 
〝忙しい″は「心を亡くす」と書く。
 
とはよく言ったもので、確かにその通りかもしれない。
同じスタッフ数で、より多くの来店・注文があるわけだから、心を亡くすほど忙しさを感じることもある。
 
そうなると、目の前の作業をこなす事に精一杯になり、そんななかお客様と『心を通じさせる接客』が以前よりもおろそかにされてしまった。
それが一つの原因であることは間違いないだろう。
 
 
 
 
 

2つ 「慣れ」

 
 
 
いい意味でも、悪い意味でも僕らは仕事に慣れはじめている。
 
 
 
この職場では多くの大学生や、20代中盤にかけての女性が『憧れのスタバ店員さん』を実現させて働いている。
 
その憧れの場所で働ける喜びや、毎日新しい発見のある新鮮さは、たとえ作業にはまだ不慣れだったとしても、お客様からすればキラキラ輝いて見えるものだ。
 
 
 
例えば「お客様!実はキャラメルソースのトッピングが無料でできるんですっ!」と瞳孔をガバッと開きながら、一心不乱になって絶対オススメです!と感情豊かに表現するような光景が以前はあった。
 
 
実際にその提案はお客様からも高評価で、少し前のアンケートには「他では一度も教えてくれなかったことを、ここのスタッフは親切に教えてくれる。」という内容のものが目立っていた。
 
その光景を今ではあまり見かけなくなった。
たまに見かけても「キャラメルソースかけますか?」くらいなもんだ。
 
同じ提案に、慣れてしまったのだ。
 
 
 
まあ、九官鳥のように何度も同じことを言ってると、周りの同僚(以下;パートナー)に馬鹿の一つ覚えか?と思われ兼ねないから、段々とやらなくなる気持ちも分かる。
 
 
だけど僕らが価値を提供する相手というのは、毎日横で見ているパートナーではなく、一期一会のお客様だ。
 
 
もし断られたとしても傷つく必要はないし、周りの目を気にして恥ずかしがる必要もない。
 
目の前の相手が、その価値を必要としてくれる相手だと信じて言えばいい。
 
もし「結構だ」言われたら、ニコッと笑顔で「そうでしたか、失礼いたしましたっ」と言うことを最初から決めておけば、意味なく自信をなくすこともない。
 
 
その一言の提案に感動してまた来たいと思ってくれる人がいる。ということを忘れちゃいけない。
 
そして感動って伝染するもんだと思う。
自分が感動してないのに、相手を感動させることはできない。
 
仕事に慣れてしまい、自分の感動が薄れた状態で、相手の心を動かすことなんてやっぱりできない。
 
だから『慣れ』は顧客満足の天敵なのかもしれない。
 
 
 
 

そして3つ目の理由。

 
 
 
これが最も目を逸らせない問題と考える。
 
 
 
顧客満足の下がった3番目の理由。それをひとことで言うならば「殺伐感」
 
 
少し大袈裟かもしれないが、パートナー達が恐怖に怯えながら働く空気とも言い変えられる。
 
 
 
それはオープンから3ヶ月が経過し、教育(マネジメント)の質が徐々に変化をみせ始めたことに要因があるように思う。
 
 
 
マネージャー達の頭のなかは「まだまだ出来なくて当然」だった頃から、もう3ヶ月も経つんだから「それは出来て当然でしょ」という思考へと移ろうとしている。
 
すると本人は一生懸命やってるつもりでも、なぜそんなことも出来ないんだ?とついつい細かい口出しをしたくなるものだ。
 
 
 
そうした行動はどの企業においても、上司として当然の姿とされている。
しかし、部下の心のなかに「また怒られるかもしれない…」という恐怖心を大きく育ててしまっているのかもしれない。
 
 

失敗を許される環境が人を育てる

 
スターバックスでは基本業務に関しては、全員もれなく『80時間研修』で体得している。(『80時間研修』については以前の記事を参照)
 
 
 
しかし3ヶ月も経てば、よーいドン!で一斉にスタートした30人近くのスタッフのスキルにもバラツキが出始める。
 
80時間研修でほぼ横並びの土台を築き、その上に積み上げる応用スキルの差だ。
 
 
そのスキルの上達には、何度も挑戦して試行錯誤することが重要ということ。
そのために〝失敗を許される環境″ は欠かせない。
 
スターバックスでの具体的なスキルを挙げるとすれば、ドリンクの作成やレジ処理のスピードだったり正確さ、そしてお客様とのコミュニケーション能力だろう。
 
当然そこには、新人とベテランとの間に能力の差がある。
 
しかし失敗の多い新人が、ベテランよりも仕事ができない理由はたった一つ。
経験不足だ。たったそれだけ。
 
 
しかし多くの指導者はその失敗を許せず、厳しく指摘することで部下を成長させようとする。
すると部下は萎縮してしまい、何も挑戦できなくなってしまうだろう。
怒られない程度の無難なサービスを目指すようになる。
 
失敗に対する指摘を、自分への攻撃と受け取られるかもしれない。
特に社会経験の少ない新入社員などはそうじゃないだろうか。
 
 
 
同僚やお客さんの前で怒られるたび、頭は真っ白になり、それまで出来たことも突然できなくなったりする。皆さんもそんな経験ないだろうか?
 
するとまた失敗を重ね、焦る。そしてまた注意される。
次第に顔から表情が消え、こうなるともう完全に負の連鎖だ。それはきっとお客様にも伝わってしまう。
 
その失敗にばかり目がいくと、仕事の本質を見失いやすい。
 
例えばお客様とのコミュニケーションを優先したせいで、手元のドリンクを作る作業が少し遅れた。
このときにドリンクのスピードについて指摘されたとしよう。
 
そうするとドリンクをもっと早く作らなきゃ」と考えてしまい、それを優先した結果、お客様とのコミュニケーションはおろそかになってしまう。ということはありがちだ。
 
 
休憩中、同じ時期に入った女子大生パートナーと話したとき、
「私、◯◯さんに怒られなくなることが目標なんです。」と語ってくれた。
 
本人は自分で掲げたその目標を達成するために、日々頑張っていると言う。
 
「おお、そうなんだね。」と言ったものの、「果たしてそれは正しいのか?」と思ってしまった。
 
 
 
きっと「怒られたくない」をモチベーションに頑張り続けても相応の上達を見せるだろう。
 
でも、そこには限界があるように感じる。
 
だって『怒られないために働く人』になってしまうから。
 
きっと怒られないようにする方法はいくらでもある。
だけど、それじゃ今以上のサービスは生まれにくくなる。
 
 
 
「部下に、どこ向いて仕事してもらいたいか」
 
 
 
部下を信じる、というマネジメントは言葉で言うよりずっと難しい。
失敗を許すマネジメント、とも言えるだろう。
それにはどんな責任も自分が負うという覚悟が必要だ。
 
しかし、多くのマネージャーはつい部下の失敗を責めてしまう。
 
そうした指導の末、従業員もまた他の従業員のミスにばかり目がいくようになっている。
 
このままでは、褒め合うことを忘れ、誰かの失敗を見つけては上げ足を取るように指摘する。
それが職場の正義となってしまう。
 
常に誰かからの指摘に怯え、殺伐とした空気のなか働く環境。
もしかすると、3ヶ月経って変化し始めた働く環境そのものが、顧客満足を下げる一つの要因になっているのかもしれない。
 
 

スターバックスに見る「利益の最大化」の手法

「利益の最大化」

 
 
利益についての考えは、既に世の中では様々な切り口よって語られている。
 
 
利益、それは企業の使命である。なぜなら利益なしに事業の永続はあり得ないから。
 
あなたの今行っているサービスやその商品は、世の中に供給され続けなければならない。
そうでなければ、これまでそれを信じて買ってくれあなたを支えた人たちは報われない。
それを可能にする手段こそが、利益。
 
僕はこの意見に同意する。
 
しかし、そう分かっていてもマネージャーたちの多くは、日々頭を悩ませているはずだろう。
 
 
 
「どうすれば…もっと売り上げを伸ばせるのか?」
 
 
 
そう。利益の最大化はすべて彼らのマネジメント力に掛かっている。
 
 
 

利益を上げる3つの方法

 
周知の原則だが「利益の最大化」の手法は、たったの3つしかない。
 
① もっと多くの人に買ってもらう
② 同じ人に何度も買ってもらう
③ 商品単価を上げる
 
 
①は、言い換えれば「集客」のひと言だろう。
 
今よりもっと多くの人に買ってもらえれば、当然、売り上げは伸びる。それくらい、誰にだって分かりそうだ。だから最初にパッと思いつくアイデアって、ほとんどがこれに帰属するんじゃないかな?
そういう意味では競争率の高い手法でもある。僕も集客については、震災後に立ち上げた注文建築部門での2年間、大きく悩まされた。
 
集客改善の具体的な手段とは
 
もっと多くの人に自分の存在を知ってもらうため、まず広告を見直そうとするだろう。チラシの配布量を増やし、チラシの紙質を改良したり、キャッチコピーを見直すこともある。
 
またHP作成もしくは改良、GoogleSEO対策やPPC広告YouTubeFacebook・ブログなどSNSを活用し、場合によってはラジオやテレビCMを企画するかもしれない。
 
しかし職種やその業態によって、どれが効果的かは異なるので、その選択を間違っちゃいけない。無駄なコストと時間を奪われることになってしまう。
 
 

注文建築の集客で犯した失敗

 
例えば僕が前職で最初に犯した間違いは、ブログ構築後の拡散方法だ。ブログを書いてきたこと自体は良かったと思っているし、最終的にはその効果を少しは実証できた。
正直、頭のなかのことをわざわざ文字にするのってとても面倒だし、もうやめようかなって何度も思うけど、今もこうして続けられているのはそのおかげだ。(それにしても毎度、文章がダラダラ長いのは読んで頂けている方々に対して、本当に申し訳ないと思っています。)
 
ちなみに、2011年に最初のブログを書いてもう丸3年を超え、書いた記事も230を超えた。
 
 
当初、千葉の浦安市エリアに限った建築事務所であるにも関わらず、大風呂敷を広げ、日本全国に向けるような内容で記事を書いてしまった。
 
あとで思えば、自社商品の最大のアピールポイントとした「専門性の高さ」を中心に置き過ぎたマーケティングが間違いだった。
 
要は、ターゲットを絞り込む順番を間違えたわけだ。
 
ちなみに、なぜ専門性を中心に置いたのかというと、それは商品が高額だからだ。
一般的な注文住宅の1.5倍の価格に、相応もしくはそれ以上の価値を感じて貰い、「安いよね」と言って貰わなければまず選ばれることはない。
2000万円の予算を、3000万円まで引き上げて貰うわけだから。
 
 
話を戻すと、ターゲットを絞り込む順番だ。小さな建築事務所というのは「地域性」が何よりも優位する。
だから先に地域を絞ったうえで次に、専門性を求める相手を絞り込まなければならない。それに気が付いたのは、ブログ構築のしばらく後だった。
 
もっと早く気付くべきだった。
が、どうしてそれに気が付いたかと言うと
 
当初、専門性の高さをアピールするため『パッシブハウス』『内外ダブル断熱』『無垢と漆喰の自然素材住宅』…など、その専門分野がハッキリと分かるキーワードばかりを主張したSEO対策を行っていた。
 
すると何が起こるか?
 
電話が鳴り、メールが届き、ブログ記事に対しても質問コメントが入るなど、消費者からの反応は増える。
が、残念なことにそのほとんどが県や州をまたぎ建築不可能な遠いエリアばかり。
 
挙句の果てに「私の住むエリアでそのような家を建てられる業者をご紹介頂けませんか?」と聞かれる始末。
 
ボランティアのように相談に乗り、おすすめの建築会社まで探して教えて差し上げる。個人的な信頼は得られるものの、会社の利益としては全く実を結ばないものばかりだった。
 
 

ブログから反響を取った方法

 
そこで、新たに取った方法から効果を得た。これによって1年後には受注が3 →15棟。建築業界以外の人には分かりづらい数字かもしれないが、前年比で500%を超えた。
うちの事務所には僕以外にもう一人、設計〜現場の担当者が居た。前年までの彼の時間的余裕(=暇)が嘘のように、1日24時間ではどうにも回り切らないほど多忙になるといった変化を味わった。
しかしその分、設計打ち合わせの連絡不足や、工事現場の遅れなど、お客様からのクレームも急増するといった問題が露呈した。
そこは案件数の増加に応じて、チーム体制にも変化を要求されるだろう。
 
さて、どのように集客法を変えたかと言うと。
 
それまで時間を割かれていたインターネットのSEO対策を緩め、チラシ→ブログ→問い合わせ の3段構えに変えてみた。
 
だって僕らの存在を知って欲しい地域は浦安だけなんだから。的を絞ってチラシを投函すればいい。そう思った。
 
今更になって気付いたのか、と思うようなシンプルなことだ。
 
ただし、ここで重要だと考えたのは他のチラシに紛れてしまわないこと。
我が家もポストのなかはチラシだらけだ。
 
だから、まぁほとんどが紛れちゃうんだけど、それでも少しでも確率を上げようという話。
 
そのためには、まずチラシを手に取って見てもらえることはもちろん、
「チラシから問い合わせを狙わない」ことが最も重要だと考えた。
 
問い合わせを狙おうとしなければ、独自性も追及しやすい。その他大勢の〝問い合わせ狙い″のチラシたちに紛れてしまわない為のアイディアが思いつきやすい。
 
そこでチラシの目的を、ブログに誘導することで独自性を追及した。ブログを見てもらうためにはどうすればいいか?を考えてチラシを練った。
 
つまり、ブログを宣伝するチラシを撒いたわけだ。
 
だって今どき、チラシの向こう側の相手は、いきなり建築会社を訪問したり、電話しようなんて考えないでしょ?
 
情報と引き換えに住所や電話番号などを言葉巧みに聞き出され、しつこい営業に付き纏わられることに対して辟易しているだろう。
 
 
 
だから、まずインターネットで情報を得ようと考えるのが普通だろう。彼らは営業マンにダマされまいと、理論武装するための情報を得るわけ。
 
インターネットに自らの意志で情報を取りに行く分にはリスクと感じにくく、積極的になれ、しかもその情報を信じ込みやすい。
 
そして、積極的に取りに行った情報に対して「これは信頼できそうだな」という感情が生まれれば、その情報元の人や会社が信用されることも然り。
 
だったら先回りすればいい。
 
という具合に、その役目をブログに持たせて、ブログへの誘導係としてチラシを活用した。
 
そして専門性の高い家を建てたいと思う〝浦安に住む人″(←これが最も重要)の集客に成功した。
 
 
詳しく興味のある方は↓こちら(以前の記事)を参照ください
 
 
 

同じ人に、何度も買ってもらう(= ファン化 )

 
ただ、②何度も買ってもらうという発想は過去、一度もできなかった。
 
やっぱり『家』というのは、できれば一生に一度の買い物にして貰いたかった。
 
日本の家の平均寿命は28年だけど、僕が提供していた「100年住める家」にどうやって価値を感じてもらえだろうか?と
 
②何度も買ってもらう、とは真逆の発想を持っていたからだ。
 
 
 
しかし、今は一杯数百円のコーヒーを売っている。家とは違う。
 
 
毎日飲んでもらうにはどうすれば良い?
一日のうちに何度も飲んでもらうにはどうすれば良い?
 
といったことも、自然と考えられる。
 
 
 
これは「ファン化」を考えること、と言い換えていいだろう。
 
 
 
美味しいだけのコーヒーなら今や、いつでもどこでも手に入る。
しかも価格は100円から。
挽きたてのコーヒーが楽しめる、いい時代に生まれたもんだ。
 
 
 
そのなかで③単価を上げながら、②何度も買ってもらうためには、顧客の「ファン化」は避けられない課題だ。
 
 
 
ファンになってもらう過程で〝不自然さ″をなんとか取り除きたい。
 
大きく考えて、人って自然を愛して、不自然を嫌う生き物だと思う。
 
 
 
例えば、洋服ショップでお決まりの「あ、見てるだけです」という断り文句。
あれこそ〝不自然さ″に対する、拒絶反応の代表格ではないだろうか?
 
そもそも、赤の他人が話しかけてくる状況そのものが人にとっては不自然なこと。ナンパと同じだ。ほとんどが拒絶する。
 
 
その状況で「何かお探しですか?」などと不可解な質問をされ、不用意に返答をした日には確実に売り込みが始まることは簡単に想像できる。
 
僕もよく利用するこの「見てるだけ」という名言。
本当は気に入ったものがあれば買おうかな、くらいの気持ちでお店に入るんだけど、まだそれが見つからないうちに、ポジティブと抱き合わせで洋服を押し売りしてきそうなショップ店員にテンション高めで話しかけられると、すぐさま拒絶してしまう。
これは営業マンも同じだ。クロージングを匂わせる質問や問いかけには「ちょっと考えさせて下さい」とか「親に相談します」という便利な言葉で逃げられるだろう。
 
もちろん、買う物が既に決まっている場合の話は別だ。買う側としても話し掛けてもらっても困らないし、何だったら調子いいときは自分から店員や営業マンに話し掛けることもある。最初からナンパされ目的でビーチにいるギャル達に声を掛けるのが容易いのと同じだ。
 
 
 
でも店の立場とすれば、何も声を掛けなければファンになってもらう切っ掛けすらも失ってしまう。じゃあ、どうすればいいんだろう?
 
 
一人で考えても分からなかったので、Facebookを利用して友人に問いかけてみた。
 
 
〝自然な声掛け″のゴールを「話が弾む」に設定。
あなたがお客なら「どんな声掛けなら、洋服を買いたくなるか?」ではなく、「どんな声掛けなら、そのあと話が弾みそうか?」という質問を投げかけた。
 
 
 
すると、計10件の返信が来た。
 
彼・彼女らは、商社、広告代理店、鍼灸師、元アパレル店員、現アパレル店員、不動産事務員、主婦、僕の母親…と職種は様々だ。
 
 
 
意見も様々。
天気の話をする、試供品(試食)を用意しておく、おすすめ品をお客様の近くにそっと置いておく、困っている雰囲気なら話しかける、買わずに出て行った人に対し「ありがとう」と声を掛けて好印象を残し次回の来店に繋げる、話し掛けて欲しくなさそうな人にはそもそも話し掛けちゃダメでしょ…など。
 
 
 
それらの意見から『相手を察する』という、共通のキーワードを感じた。
 
 
 
例えば、突然の雨のなか来店したお客様に、天気の話題で話し掛ければ、それは自然に受け入れられるだろう。
そして、もしお客様がキョロキョロし始めたら、スッと近寄りお手伝いしますか?といった気遣いの言葉をかける。これも相手に受け入れられる可能性が高そうだ。
それにやはり、話しかけられたくない雰囲気を出した人には、なるべく話しかけないこと。
 
それらが相手の状況を〝察する″ことであり「ファン化」の土台と言える。
 
 

ファン化の立役者は誰?

 
そして最も重要なことは、その「ファン化」を実現するのは誰か?ということ。
それは、お客様と顔を合わせて接する従業員や営業マンなのだ。彼らの存在こそ、顧客のファン化には欠かせない。
彼らに正しい行動を取らせるのがマネージャーの責務だ。
 
だから、売り上げに悩む余りに「売り上げを伸ばせ」「成績をあげろ」など、そのまんまの指示を出しているマネージャーなんかは要注意だろう。
その命令は、部下や従業員への重圧でしかなく、顧客のファン化とは真逆の行動を生む原因となっている。
 
ファン化とは真逆、つまり「利益の最大化とは真逆」の行動を取らせている可能性に目を向けなければならない。そうしたマネジメントを続ける以上、いつまで経っても売り上げの悩みから解放されない。
 
既に多くのファンを抱えるスターバックスと言えども、各店舗によって利益は異なる。つまりファン顧客の数に差がある。それは例えば同じ銀座地区のなかでも顕著だ。
 
そして、マネージャーの人間性もやはり異なる。多くの部下から尊敬される人もいれば、どうやらそうでない人物も居るようだ。
もちろん、スターバックスで受ける教育は体系化されているから、誰が受けても内容は全く同じだ。
 
しかし「何を教わるか」より「誰から教わるか」が最も重要だ。
人は常に「正しいから聞く」のではなくて、「誰が言うか」でその話を聞くかどうかを決定している。
 
そして、それを決定する〝人間性″はプレイヤーとしての仕事力のみでは決まらない。
だからこそ、誰をリーダーにするかはとても重要になる。
 
経営者の多くはトップ成績の営業マンや、自己犠牲を省みずバリバリ働くスーパービジネスマンをリーダーにしたがる。
しかし、名プレイヤーにして名監督にあらずだ。
 
僕も大学受験のとき、京大生から受けた指導はチンプンカンプンだったが、ワンランク下の大学の先生の指導はとても分かりやすかった。天才やスーパースターの誰もが、凡人を導く力があるとは限らない。
 
各店舗のマネージャーの口から放たれる言葉が違えば、当然、そこで働く従業員のモチベーションも店舗によって違う。
 
優秀なマネージャーほど、従業員からの信頼は絶大だ。これは中に入ってみて初めて見えたことだ。お客の立場では、絶対に見えないし気付けないことだ。
 
従業員の質は、イコール仕事への姿勢と言える。
優秀なマネージャーの在籍する店舗、つまり高い利益を生み出している店舗の従業員には共通点を見つけられる。
 
それは、彼らが『仕事を心から楽しんでいる』ことだ。一目で分かる。
仕事を楽しむ。それって、とてもシンプルだけど極めて高いビジネススキルではないだろうか。
 
一方、あまり売り上げの良くないお店のマネージャーの行動は、ひと言で言えば「恐怖の植え付け」だろう。ああしなきゃだめ、こうしなきゃだめと立場を利用して自分の価値観を押し付ける。そして相手の話はあまり真剣に聞いていない。
(ただ「相手の話には耳を傾けなきゃだめ」というノウハウも持ち合わせているので、聞くフリは上手だったりする。しかし、本当に聞いているかは話す側がすぐに見分けられる。)
 
そんなマネジメントが「怒られないために必死で頑張る人」を生み出してしまう。
 
だけど顧客がその会社やお店に魅了される理由って、ファン化する理由って、
そこで働く人の〝必死さ″によるものじゃなく、『仕事を心から楽しんでいる』様子が伝わるからじゃないかなと思う。
 
だからマネージャーには、部下を仕事に〝夢中″にさせる能力が必要だ。
本気でそう思う。