不動産営業を辞めてスタバでバイト

脱サラ(元住宅営業マン)してスタバでアルバイトした体験を綴ります。

スターバックスに見る「利益の最大化」の手法

「利益の最大化」

 
 
利益についての考えは、既に世の中では様々な切り口よって語られている。
 
 
利益、それは企業の使命である。なぜなら利益なしに事業の永続はあり得ないから。
 
あなたの今行っているサービスやその商品は、世の中に供給され続けなければならない。
そうでなければ、これまでそれを信じて買ってくれあなたを支えた人たちは報われない。
それを可能にする手段こそが、利益。
 
僕はこの意見に同意する。
 
しかし、そう分かっていてもマネージャーたちの多くは、日々頭を悩ませているはずだろう。
 
 
 
「どうすれば…もっと売り上げを伸ばせるのか?」
 
 
 
そう。利益の最大化はすべて彼らのマネジメント力に掛かっている。
 
 
 

利益を上げる3つの方法

 
周知の原則だが「利益の最大化」の手法は、たったの3つしかない。
 
① もっと多くの人に買ってもらう
② 同じ人に何度も買ってもらう
③ 商品単価を上げる
 
 
①は、言い換えれば「集客」のひと言だろう。
 
今よりもっと多くの人に買ってもらえれば、当然、売り上げは伸びる。それくらい、誰にだって分かりそうだ。だから最初にパッと思いつくアイデアって、ほとんどがこれに帰属するんじゃないかな?
そういう意味では競争率の高い手法でもある。僕も集客については、震災後に立ち上げた注文建築部門での2年間、大きく悩まされた。
 
集客改善の具体的な手段とは
 
もっと多くの人に自分の存在を知ってもらうため、まず広告を見直そうとするだろう。チラシの配布量を増やし、チラシの紙質を改良したり、キャッチコピーを見直すこともある。
 
またHP作成もしくは改良、GoogleSEO対策やPPC広告YouTubeFacebook・ブログなどSNSを活用し、場合によってはラジオやテレビCMを企画するかもしれない。
 
しかし職種やその業態によって、どれが効果的かは異なるので、その選択を間違っちゃいけない。無駄なコストと時間を奪われることになってしまう。
 
 

注文建築の集客で犯した失敗

 
例えば僕が前職で最初に犯した間違いは、ブログ構築後の拡散方法だ。ブログを書いてきたこと自体は良かったと思っているし、最終的にはその効果を少しは実証できた。
正直、頭のなかのことをわざわざ文字にするのってとても面倒だし、もうやめようかなって何度も思うけど、今もこうして続けられているのはそのおかげだ。(それにしても毎度、文章がダラダラ長いのは読んで頂けている方々に対して、本当に申し訳ないと思っています。)
 
ちなみに、2011年に最初のブログを書いてもう丸3年を超え、書いた記事も230を超えた。
 
 
当初、千葉の浦安市エリアに限った建築事務所であるにも関わらず、大風呂敷を広げ、日本全国に向けるような内容で記事を書いてしまった。
 
あとで思えば、自社商品の最大のアピールポイントとした「専門性の高さ」を中心に置き過ぎたマーケティングが間違いだった。
 
要は、ターゲットを絞り込む順番を間違えたわけだ。
 
ちなみに、なぜ専門性を中心に置いたのかというと、それは商品が高額だからだ。
一般的な注文住宅の1.5倍の価格に、相応もしくはそれ以上の価値を感じて貰い、「安いよね」と言って貰わなければまず選ばれることはない。
2000万円の予算を、3000万円まで引き上げて貰うわけだから。
 
 
話を戻すと、ターゲットを絞り込む順番だ。小さな建築事務所というのは「地域性」が何よりも優位する。
だから先に地域を絞ったうえで次に、専門性を求める相手を絞り込まなければならない。それに気が付いたのは、ブログ構築のしばらく後だった。
 
もっと早く気付くべきだった。
が、どうしてそれに気が付いたかと言うと
 
当初、専門性の高さをアピールするため『パッシブハウス』『内外ダブル断熱』『無垢と漆喰の自然素材住宅』…など、その専門分野がハッキリと分かるキーワードばかりを主張したSEO対策を行っていた。
 
すると何が起こるか?
 
電話が鳴り、メールが届き、ブログ記事に対しても質問コメントが入るなど、消費者からの反応は増える。
が、残念なことにそのほとんどが県や州をまたぎ建築不可能な遠いエリアばかり。
 
挙句の果てに「私の住むエリアでそのような家を建てられる業者をご紹介頂けませんか?」と聞かれる始末。
 
ボランティアのように相談に乗り、おすすめの建築会社まで探して教えて差し上げる。個人的な信頼は得られるものの、会社の利益としては全く実を結ばないものばかりだった。
 
 

ブログから反響を取った方法

 
そこで、新たに取った方法から効果を得た。これによって1年後には受注が3 →15棟。建築業界以外の人には分かりづらい数字かもしれないが、前年比で500%を超えた。
うちの事務所には僕以外にもう一人、設計〜現場の担当者が居た。前年までの彼の時間的余裕(=暇)が嘘のように、1日24時間ではどうにも回り切らないほど多忙になるといった変化を味わった。
しかしその分、設計打ち合わせの連絡不足や、工事現場の遅れなど、お客様からのクレームも急増するといった問題が露呈した。
そこは案件数の増加に応じて、チーム体制にも変化を要求されるだろう。
 
さて、どのように集客法を変えたかと言うと。
 
それまで時間を割かれていたインターネットのSEO対策を緩め、チラシ→ブログ→問い合わせ の3段構えに変えてみた。
 
だって僕らの存在を知って欲しい地域は浦安だけなんだから。的を絞ってチラシを投函すればいい。そう思った。
 
今更になって気付いたのか、と思うようなシンプルなことだ。
 
ただし、ここで重要だと考えたのは他のチラシに紛れてしまわないこと。
我が家もポストのなかはチラシだらけだ。
 
だから、まぁほとんどが紛れちゃうんだけど、それでも少しでも確率を上げようという話。
 
そのためには、まずチラシを手に取って見てもらえることはもちろん、
「チラシから問い合わせを狙わない」ことが最も重要だと考えた。
 
問い合わせを狙おうとしなければ、独自性も追及しやすい。その他大勢の〝問い合わせ狙い″のチラシたちに紛れてしまわない為のアイディアが思いつきやすい。
 
そこでチラシの目的を、ブログに誘導することで独自性を追及した。ブログを見てもらうためにはどうすればいいか?を考えてチラシを練った。
 
つまり、ブログを宣伝するチラシを撒いたわけだ。
 
だって今どき、チラシの向こう側の相手は、いきなり建築会社を訪問したり、電話しようなんて考えないでしょ?
 
情報と引き換えに住所や電話番号などを言葉巧みに聞き出され、しつこい営業に付き纏わられることに対して辟易しているだろう。
 
 
 
だから、まずインターネットで情報を得ようと考えるのが普通だろう。彼らは営業マンにダマされまいと、理論武装するための情報を得るわけ。
 
インターネットに自らの意志で情報を取りに行く分にはリスクと感じにくく、積極的になれ、しかもその情報を信じ込みやすい。
 
そして、積極的に取りに行った情報に対して「これは信頼できそうだな」という感情が生まれれば、その情報元の人や会社が信用されることも然り。
 
だったら先回りすればいい。
 
という具合に、その役目をブログに持たせて、ブログへの誘導係としてチラシを活用した。
 
そして専門性の高い家を建てたいと思う〝浦安に住む人″(←これが最も重要)の集客に成功した。
 
 
詳しく興味のある方は↓こちら(以前の記事)を参照ください
 
 
 

同じ人に、何度も買ってもらう(= ファン化 )

 
ただ、②何度も買ってもらうという発想は過去、一度もできなかった。
 
やっぱり『家』というのは、できれば一生に一度の買い物にして貰いたかった。
 
日本の家の平均寿命は28年だけど、僕が提供していた「100年住める家」にどうやって価値を感じてもらえだろうか?と
 
②何度も買ってもらう、とは真逆の発想を持っていたからだ。
 
 
 
しかし、今は一杯数百円のコーヒーを売っている。家とは違う。
 
 
毎日飲んでもらうにはどうすれば良い?
一日のうちに何度も飲んでもらうにはどうすれば良い?
 
といったことも、自然と考えられる。
 
 
 
これは「ファン化」を考えること、と言い換えていいだろう。
 
 
 
美味しいだけのコーヒーなら今や、いつでもどこでも手に入る。
しかも価格は100円から。
挽きたてのコーヒーが楽しめる、いい時代に生まれたもんだ。
 
 
 
そのなかで③単価を上げながら、②何度も買ってもらうためには、顧客の「ファン化」は避けられない課題だ。
 
 
 
ファンになってもらう過程で〝不自然さ″をなんとか取り除きたい。
 
大きく考えて、人って自然を愛して、不自然を嫌う生き物だと思う。
 
 
 
例えば、洋服ショップでお決まりの「あ、見てるだけです」という断り文句。
あれこそ〝不自然さ″に対する、拒絶反応の代表格ではないだろうか?
 
そもそも、赤の他人が話しかけてくる状況そのものが人にとっては不自然なこと。ナンパと同じだ。ほとんどが拒絶する。
 
 
その状況で「何かお探しですか?」などと不可解な質問をされ、不用意に返答をした日には確実に売り込みが始まることは簡単に想像できる。
 
僕もよく利用するこの「見てるだけ」という名言。
本当は気に入ったものがあれば買おうかな、くらいの気持ちでお店に入るんだけど、まだそれが見つからないうちに、ポジティブと抱き合わせで洋服を押し売りしてきそうなショップ店員にテンション高めで話しかけられると、すぐさま拒絶してしまう。
これは営業マンも同じだ。クロージングを匂わせる質問や問いかけには「ちょっと考えさせて下さい」とか「親に相談します」という便利な言葉で逃げられるだろう。
 
もちろん、買う物が既に決まっている場合の話は別だ。買う側としても話し掛けてもらっても困らないし、何だったら調子いいときは自分から店員や営業マンに話し掛けることもある。最初からナンパされ目的でビーチにいるギャル達に声を掛けるのが容易いのと同じだ。
 
 
 
でも店の立場とすれば、何も声を掛けなければファンになってもらう切っ掛けすらも失ってしまう。じゃあ、どうすればいいんだろう?
 
 
一人で考えても分からなかったので、Facebookを利用して友人に問いかけてみた。
 
 
〝自然な声掛け″のゴールを「話が弾む」に設定。
あなたがお客なら「どんな声掛けなら、洋服を買いたくなるか?」ではなく、「どんな声掛けなら、そのあと話が弾みそうか?」という質問を投げかけた。
 
 
 
すると、計10件の返信が来た。
 
彼・彼女らは、商社、広告代理店、鍼灸師、元アパレル店員、現アパレル店員、不動産事務員、主婦、僕の母親…と職種は様々だ。
 
 
 
意見も様々。
天気の話をする、試供品(試食)を用意しておく、おすすめ品をお客様の近くにそっと置いておく、困っている雰囲気なら話しかける、買わずに出て行った人に対し「ありがとう」と声を掛けて好印象を残し次回の来店に繋げる、話し掛けて欲しくなさそうな人にはそもそも話し掛けちゃダメでしょ…など。
 
 
 
それらの意見から『相手を察する』という、共通のキーワードを感じた。
 
 
 
例えば、突然の雨のなか来店したお客様に、天気の話題で話し掛ければ、それは自然に受け入れられるだろう。
そして、もしお客様がキョロキョロし始めたら、スッと近寄りお手伝いしますか?といった気遣いの言葉をかける。これも相手に受け入れられる可能性が高そうだ。
それにやはり、話しかけられたくない雰囲気を出した人には、なるべく話しかけないこと。
 
それらが相手の状況を〝察する″ことであり「ファン化」の土台と言える。
 
 

ファン化の立役者は誰?

 
そして最も重要なことは、その「ファン化」を実現するのは誰か?ということ。
それは、お客様と顔を合わせて接する従業員や営業マンなのだ。彼らの存在こそ、顧客のファン化には欠かせない。
彼らに正しい行動を取らせるのがマネージャーの責務だ。
 
だから、売り上げに悩む余りに「売り上げを伸ばせ」「成績をあげろ」など、そのまんまの指示を出しているマネージャーなんかは要注意だろう。
その命令は、部下や従業員への重圧でしかなく、顧客のファン化とは真逆の行動を生む原因となっている。
 
ファン化とは真逆、つまり「利益の最大化とは真逆」の行動を取らせている可能性に目を向けなければならない。そうしたマネジメントを続ける以上、いつまで経っても売り上げの悩みから解放されない。
 
既に多くのファンを抱えるスターバックスと言えども、各店舗によって利益は異なる。つまりファン顧客の数に差がある。それは例えば同じ銀座地区のなかでも顕著だ。
 
そして、マネージャーの人間性もやはり異なる。多くの部下から尊敬される人もいれば、どうやらそうでない人物も居るようだ。
もちろん、スターバックスで受ける教育は体系化されているから、誰が受けても内容は全く同じだ。
 
しかし「何を教わるか」より「誰から教わるか」が最も重要だ。
人は常に「正しいから聞く」のではなくて、「誰が言うか」でその話を聞くかどうかを決定している。
 
そして、それを決定する〝人間性″はプレイヤーとしての仕事力のみでは決まらない。
だからこそ、誰をリーダーにするかはとても重要になる。
 
経営者の多くはトップ成績の営業マンや、自己犠牲を省みずバリバリ働くスーパービジネスマンをリーダーにしたがる。
しかし、名プレイヤーにして名監督にあらずだ。
 
僕も大学受験のとき、京大生から受けた指導はチンプンカンプンだったが、ワンランク下の大学の先生の指導はとても分かりやすかった。天才やスーパースターの誰もが、凡人を導く力があるとは限らない。
 
各店舗のマネージャーの口から放たれる言葉が違えば、当然、そこで働く従業員のモチベーションも店舗によって違う。
 
優秀なマネージャーほど、従業員からの信頼は絶大だ。これは中に入ってみて初めて見えたことだ。お客の立場では、絶対に見えないし気付けないことだ。
 
従業員の質は、イコール仕事への姿勢と言える。
優秀なマネージャーの在籍する店舗、つまり高い利益を生み出している店舗の従業員には共通点を見つけられる。
 
それは、彼らが『仕事を心から楽しんでいる』ことだ。一目で分かる。
仕事を楽しむ。それって、とてもシンプルだけど極めて高いビジネススキルではないだろうか。
 
一方、あまり売り上げの良くないお店のマネージャーの行動は、ひと言で言えば「恐怖の植え付け」だろう。ああしなきゃだめ、こうしなきゃだめと立場を利用して自分の価値観を押し付ける。そして相手の話はあまり真剣に聞いていない。
(ただ「相手の話には耳を傾けなきゃだめ」というノウハウも持ち合わせているので、聞くフリは上手だったりする。しかし、本当に聞いているかは話す側がすぐに見分けられる。)
 
そんなマネジメントが「怒られないために必死で頑張る人」を生み出してしまう。
 
だけど顧客がその会社やお店に魅了される理由って、ファン化する理由って、
そこで働く人の〝必死さ″によるものじゃなく、『仕事を心から楽しんでいる』様子が伝わるからじゃないかなと思う。
 
だからマネージャーには、部下を仕事に〝夢中″にさせる能力が必要だ。
本気でそう思う。