不動産営業を辞めてスタバでバイト

脱サラ(元住宅営業マン)してスタバでアルバイトした体験を綴ります。

顧客満足の低下と向き合ってみる。

顧客満足の指標である〝フレンドリーさ″の低下。
その要因をこの1ヶ月、自分なりに考察をしてみた。
 
 
 
原因は3つ。
 
 

1つ 「単純に忙しくなった」

 
 
 
顧客満足の低下と矛盾するようだが、昨年のオープンから客数と売り上げは日に日に上昇を続けている。これは、これまで築き上げられてきた『スターバックス』の持つブランド力が大きく影響しているだろう。
だから個人でカフェを開業し、あの評価の低いアンケート内容で、同じように繁盛するかは分からない。
 
 
 
なぜ売上は伸びてるのか?
 
認知度が上がったことが理由だろう。
 
僕の働く店は都心ど真ん中、駅前の好立地。
…と言っても、実は結構気付きづらい場所にある。
 
 
 
だから当初はなかなか見つけて貰えず、客足もまばら。
仕事量も、忙しい日の方が少なかった。
 
 
 
しかし、3ヶ月も経てばそれなりに人の目には付くようになるし「あそこにスタバできたよ」といった噂も、わーっと広まる頃合いか。
ただ、今でも「この店舗いつ出来たの?職場すぐそこなのに知らなかったよ」とも言われることもある。まだその程度の認知度だ。
 
 
 
それでも今までよりずっと多くの新規来店があるお陰で繁盛し、店は忙しい。
 
〝忙しい″は「心を亡くす」と書く。
 
とはよく言ったもので、確かにその通りかもしれない。
同じスタッフ数で、より多くの来店・注文があるわけだから、心を亡くすほど忙しさを感じることもある。
 
そうなると、目の前の作業をこなす事に精一杯になり、そんななかお客様と『心を通じさせる接客』が以前よりもおろそかにされてしまった。
それが一つの原因であることは間違いないだろう。
 
 
 
 
 

2つ 「慣れ」

 
 
 
いい意味でも、悪い意味でも僕らは仕事に慣れはじめている。
 
 
 
この職場では多くの大学生や、20代中盤にかけての女性が『憧れのスタバ店員さん』を実現させて働いている。
 
その憧れの場所で働ける喜びや、毎日新しい発見のある新鮮さは、たとえ作業にはまだ不慣れだったとしても、お客様からすればキラキラ輝いて見えるものだ。
 
 
 
例えば「お客様!実はキャラメルソースのトッピングが無料でできるんですっ!」と瞳孔をガバッと開きながら、一心不乱になって絶対オススメです!と感情豊かに表現するような光景が以前はあった。
 
 
実際にその提案はお客様からも高評価で、少し前のアンケートには「他では一度も教えてくれなかったことを、ここのスタッフは親切に教えてくれる。」という内容のものが目立っていた。
 
その光景を今ではあまり見かけなくなった。
たまに見かけても「キャラメルソースかけますか?」くらいなもんだ。
 
同じ提案に、慣れてしまったのだ。
 
 
 
まあ、九官鳥のように何度も同じことを言ってると、周りの同僚(以下;パートナー)に馬鹿の一つ覚えか?と思われ兼ねないから、段々とやらなくなる気持ちも分かる。
 
 
だけど僕らが価値を提供する相手というのは、毎日横で見ているパートナーではなく、一期一会のお客様だ。
 
 
もし断られたとしても傷つく必要はないし、周りの目を気にして恥ずかしがる必要もない。
 
目の前の相手が、その価値を必要としてくれる相手だと信じて言えばいい。
 
もし「結構だ」言われたら、ニコッと笑顔で「そうでしたか、失礼いたしましたっ」と言うことを最初から決めておけば、意味なく自信をなくすこともない。
 
 
その一言の提案に感動してまた来たいと思ってくれる人がいる。ということを忘れちゃいけない。
 
そして感動って伝染するもんだと思う。
自分が感動してないのに、相手を感動させることはできない。
 
仕事に慣れてしまい、自分の感動が薄れた状態で、相手の心を動かすことなんてやっぱりできない。
 
だから『慣れ』は顧客満足の天敵なのかもしれない。
 
 
 
 

そして3つ目の理由。

 
 
 
これが最も目を逸らせない問題と考える。
 
 
 
顧客満足の下がった3番目の理由。それをひとことで言うならば「殺伐感」
 
 
少し大袈裟かもしれないが、パートナー達が恐怖に怯えながら働く空気とも言い変えられる。
 
 
 
それはオープンから3ヶ月が経過し、教育(マネジメント)の質が徐々に変化をみせ始めたことに要因があるように思う。
 
 
 
マネージャー達の頭のなかは「まだまだ出来なくて当然」だった頃から、もう3ヶ月も経つんだから「それは出来て当然でしょ」という思考へと移ろうとしている。
 
すると本人は一生懸命やってるつもりでも、なぜそんなことも出来ないんだ?とついつい細かい口出しをしたくなるものだ。
 
 
 
そうした行動はどの企業においても、上司として当然の姿とされている。
しかし、部下の心のなかに「また怒られるかもしれない…」という恐怖心を大きく育ててしまっているのかもしれない。
 
 

失敗を許される環境が人を育てる

 
スターバックスでは基本業務に関しては、全員もれなく『80時間研修』で体得している。(『80時間研修』については以前の記事を参照)
 
 
 
しかし3ヶ月も経てば、よーいドン!で一斉にスタートした30人近くのスタッフのスキルにもバラツキが出始める。
 
80時間研修でほぼ横並びの土台を築き、その上に積み上げる応用スキルの差だ。
 
 
そのスキルの上達には、何度も挑戦して試行錯誤することが重要ということ。
そのために〝失敗を許される環境″ は欠かせない。
 
スターバックスでの具体的なスキルを挙げるとすれば、ドリンクの作成やレジ処理のスピードだったり正確さ、そしてお客様とのコミュニケーション能力だろう。
 
当然そこには、新人とベテランとの間に能力の差がある。
 
しかし失敗の多い新人が、ベテランよりも仕事ができない理由はたった一つ。
経験不足だ。たったそれだけ。
 
 
しかし多くの指導者はその失敗を許せず、厳しく指摘することで部下を成長させようとする。
すると部下は萎縮してしまい、何も挑戦できなくなってしまうだろう。
怒られない程度の無難なサービスを目指すようになる。
 
失敗に対する指摘を、自分への攻撃と受け取られるかもしれない。
特に社会経験の少ない新入社員などはそうじゃないだろうか。
 
 
 
同僚やお客さんの前で怒られるたび、頭は真っ白になり、それまで出来たことも突然できなくなったりする。皆さんもそんな経験ないだろうか?
 
するとまた失敗を重ね、焦る。そしてまた注意される。
次第に顔から表情が消え、こうなるともう完全に負の連鎖だ。それはきっとお客様にも伝わってしまう。
 
その失敗にばかり目がいくと、仕事の本質を見失いやすい。
 
例えばお客様とのコミュニケーションを優先したせいで、手元のドリンクを作る作業が少し遅れた。
このときにドリンクのスピードについて指摘されたとしよう。
 
そうするとドリンクをもっと早く作らなきゃ」と考えてしまい、それを優先した結果、お客様とのコミュニケーションはおろそかになってしまう。ということはありがちだ。
 
 
休憩中、同じ時期に入った女子大生パートナーと話したとき、
「私、◯◯さんに怒られなくなることが目標なんです。」と語ってくれた。
 
本人は自分で掲げたその目標を達成するために、日々頑張っていると言う。
 
「おお、そうなんだね。」と言ったものの、「果たしてそれは正しいのか?」と思ってしまった。
 
 
 
きっと「怒られたくない」をモチベーションに頑張り続けても相応の上達を見せるだろう。
 
でも、そこには限界があるように感じる。
 
だって『怒られないために働く人』になってしまうから。
 
きっと怒られないようにする方法はいくらでもある。
だけど、それじゃ今以上のサービスは生まれにくくなる。
 
 
 
「部下に、どこ向いて仕事してもらいたいか」
 
 
 
部下を信じる、というマネジメントは言葉で言うよりずっと難しい。
失敗を許すマネジメント、とも言えるだろう。
それにはどんな責任も自分が負うという覚悟が必要だ。
 
しかし、多くのマネージャーはつい部下の失敗を責めてしまう。
 
そうした指導の末、従業員もまた他の従業員のミスにばかり目がいくようになっている。
 
このままでは、褒め合うことを忘れ、誰かの失敗を見つけては上げ足を取るように指摘する。
それが職場の正義となってしまう。
 
常に誰かからの指摘に怯え、殺伐とした空気のなか働く環境。
もしかすると、3ヶ月経って変化し始めた働く環境そのものが、顧客満足を下げる一つの要因になっているのかもしれない。